大判例

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福岡高等裁判所宮崎支部 昭和33年(け)1号 判決

本件異議申立の要旨は、『福岡高等裁判所宮崎支部は昭和三三年七月八日同庁同年(て)第一〇六号事件について「昭和三二年一〇月一五日当裁判所がなした保釈決定の保証金三〇〇、〇〇〇円(内金一五〇、〇〇〇円は高梨輝次の差し出した保証書)はこれを没取する」との決定をしたが、そのうち異議申立人から保釈保証金中一五〇、〇〇〇円を没取するとの部分は以下述べる理由により取消さるべきであり、検察官の保釈保証金没取請求の申立も右部分に関しては棄却を免れない。というのは異議申立人は昭和三三年七月二〇日頃福岡高等検察庁宮崎支部から保釈保証金一五〇、〇〇〇円を納付せよとの催告に接し、驚いて同庁に照会した結果右保釈保証金没取決定のあつたことを知つたのであるが、右福岡高等裁判所宮崎支部の昭和三二年一〇月一五日附被告人坂井重良に対する保釈決定によれば「保証金額は三〇〇、〇〇〇円とする。内金一五〇、〇〇〇円は被告人の伯父高梨輝次の差出す保証書を以て保証金に代えることを許す」と表示されているけれども、異議申立人は被告人坂井重良の妻坂井新子の兄の子であるから被告人からみれば異議申立人は義理の甥にあたるので、これを伯父と表示した誤りもさることながら、異議申立人はかつて一度被告人坂井重良からその刑事被告事件が福岡高等裁判所宮崎支部に係属審理中保釈手続をするのに金が必要であつたからと懇請されてやむなく三〇、〇〇〇円内外の金を貸与してやつた事実は存するものの、同被告人はもとより、その保釈請求者であつた松村鉄男、中野博義から保釈について相談を受けたことは全くなく、ましてや異議申立人名義の保釈保証書を自ら作成し、或は他の作成に同意してその印鑑を貸与したような事実は存しない。そうすると福岡高等裁判所宮崎支部に提出されたと思われる異議申立人名議の一五〇、〇〇〇円の保釈保証書なるものは、被告人坂井重良或は他の何人かが異議申立人の印章を偽造冒用して作成提出したものと考えるほかはないのである。しからば異議申立人の真意に基かないかかる偽造の保釈保証書のために異議申立人が本件保釈保証金没取決定を受け一五〇、〇〇〇円を没取さるべきいわれは毛頭ない』というのである。

そこで福岡高等裁判所宮崎支部昭和三一年(う)第四五二・四五四・四五五号被告人坂井重良に対する詐欺被告事件の確定訴訟記録竝びに同庁昭和三三年(て)第一〇六号保釈保証金没取請求事件の記録を調べてみると、被告人坂井重良は同人に対する右被告事件において昭和三一年二月六日第一審である鹿児島地方裁判所で懲役三年(未決六〇日通算)の判決の言渡を受けて控訴したが、福岡高等裁判所宮崎支部において昭和三二年一〇月四日控訴棄却の判決の言渡を受け翌五日更に上告を申立て、同月一四日弁護人松村鉄男、桝本輝義より翌一五日被告人本人より福岡高等裁判所宮崎支部に対し夫々再保釈の請求がなされて同一五日「保釈はこれを許可する。保証金額は金三〇〇、〇〇〇円とする。内金一五〇、〇〇〇円は被告人の伯父高梨輝次の差出す保証書を以て保証金に代えることを許す」旨の保釈許可決定を得、保証金のうち一五〇、〇〇〇円についてはさきに昭和三一年二月一三日鹿児島地方裁判所における保釈許可決定の際納付した現金一五〇、〇〇〇円が流用され、残一五〇、〇〇〇円については異議申立人名義の保証書を差入れた上昭和三二年一〇月一六日不収監釈放されたところ、同三三年二月二五日最高裁判所において上告棄却の決定がなされて、ここに前記第一審判決が確定するに至つたので、検察官において右刑の執行をなすため坂井重良の所在を調査した結果、同人が逃亡していたことが判明し、そこで検察官は福岡高等裁判所宮崎支部に対し同年六月二三日保釈保証金全部の没取請求をなし、同裁判所は同年七月八日その請求を理由あるものと認めて坂井重良に対する保釈保証金全部を没取する旨の決定をしたことが明かである。

しかしながら右保釈保証金没取決定を受けたものは坂井重良そのひとであり、異議申立人はさきの保釈許可決定において被告人たりし坂井重良のため保釈保証金中一五〇、〇〇〇円に代わる保証書を差し出した者となつている以上右保釈保証金没取決定に基く検察官の納付命令による執行を受くべき立場において利害関係があるとはいえ、刑事訴訟法第四二八条第三項によつて準用される同法第三五二条にいう「被告人以外の者で決定を受けたもの」には該当しないと解せられるから、異議申立人は右執行に際し異議を申立てうるやは格別、右保釈保証金没取決定に対しては本来異議申立権はないものといわなければならない。しからば本件異議の申立はすでにこの点において不適法として棄却を免れないし、従つてまた異議申立人の申立を容れて福岡高等裁判所宮崎支部が昭和三三年八月二九日にした主文第二項掲記の執行停止決定も取消さざるをえない。

(裁判長裁判官 桑原国朝 裁判官 淵上寿 裁判官 島信行)

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